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バスはいつもの道を走り、気づけば病院前に停車していた。
降りようか、乗っていようか
迷った末、あたしは、降りる事にした。
多分、あたしの鼻は真っ赤だろう。
目は腫れぼったいかもしれない。
こんな顔でどこにも行けない。
降りたはいいけど、お母さんにも会えない――。
いつものベンチは第一病棟の壁で影になっていた。
そこから見えるバス停は、太陽が照りつけていて――
やっぱりあたしはここが似合うと思った。
日陰でひっそりと生きてる。
まるであたしみたいなベンチをそっと撫でた。
ベンチに座って
何をしよう――。
何もする気になれない……。
どれくらい時間がたったのか、空の色が変わり始めていた。
本でも読もうかな……
文庫本を探そうと鞄を開けた時
ピカピカと光った携帯が見えた。
それは、不在着信があった事を伝えていて……あたしは携帯を手に取って、ゆっくりと開ける。
携帯には
里奈から
正毅から
着信が残っていた。
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