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「じゃあ、今年も行かないの?」
「行く理由、ないし」
「理由がないと行かないの?」
「そんなもんじゃねぇの?」
そんなものなのかな……
麻斗君と話していると一般常識がわからなくなる。
あたしは“お祭り”って聞くだけで、ワクワクして行きたくなるんだけど。
理由を必要とする人もいるんだなぁ。
ジロジロ見ていたら、
「俺、祭りに興味ないから」
ばっさり、話を終わらせた。
ひどいーっ!
「あれって名瀬君ちゃう?」
「ほんまや」
「名瀬君、女の子と一緒やん。なんで……」
「彼女いたっけ?」
「いーひんはず……」
ひそひそ声が背後から聞こえて、振り向いた。
そこにはあたしと同じ年くらいの女の子が三人。
改札口付近に立って、こちらを見ている。
手には、鞄の他に紙袋を持っていて。
『これ…中村君に…』
そう言って、小さな紙袋を大切に抱えた彩菜の姿を思い出した。
この子たち、麻斗君の試合を見に来た帰りなんじゃ……。
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