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「こっち」
「う、うん」
正毅が来たのは中庭だった。
一面に芝生が張られて、花壇や噴水がある。
その奥には誰だかわからない銅像も。
ここの中庭は、校内恋愛しているカップルたちの憩いの場所。
お昼ご飯を食べたり、休み時間を一緒に過ごしたりしている。
この場所に正毅と来る事は、あたしの夢だったけれど
今は空しいだけ。
肩を落としながら正毅についていく。
正毅は木製のベンチに座って
「座る?」
「うん……」
二人でベンチに座った。
いろいろな形をした雲が水色の空を動いていく。
中庭の大きな木のお陰で、痛いほどの光の束からは逃れられているけど……。
この時間は直射日光も反射も多く、利用している人はあたしたち以外誰もいなかった。
よく見ると木陰に守られているのはあたしだけで、正毅は右半分日に当たっている。
……気付いてなさそうだけど。
何を言われるんだろうと思って、緊張しながらついて来たけれど、正毅はまだ何も話さない。
長い沈黙がのしかかる中、
あたしは、正毅が半分だけ焼けてしまわないか、そちらの方が心配になってきた。
「あの……もっと、こっち……」
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