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***
「ごめんなさい…」
「珍しく、しおらしいな」
「……」
普段なら"珍しくって何!?"ってキレてる所だけど、何も言えなくなってしまった。
だって、体育館を出ると日は落ちていて、夕焼け空に星が一粒淡く光っていた。
隣には学ラン姿の麻斗君。
自転車を押しながら、肩を並べて歩いている。
あたしはあれから泣き続けた。
失恋した日から涙腺は決壊していたみたい。
泣き出すと止まらなくて……。
――『ヒック』
あたしがシャクリあげる度、ポンと背中を叩く大きな手。
――『スズッ』
鼻をすすると今度は頭に。
"今日だけにしよう"
"もう正毅の事では泣かない"
失恋したあの日から何度もそう想うのに、
なかなかスキを手放せなくて。
ただただ彩菜が羨ましくて……。
色んな感情が入り乱れて泣いた。
そんなあたしを受け入れてくれたのは……
「……見すぎじゃね?」
「ご、ごめん」
(横顔を見ていただけだったのに、気づかれてしまった。)
……この人だ。
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