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でも、先ほどまでの気持ちとは違う事は確か。 堪えていた感情がほどけて、ほとばしるように泣いたから、心の中が軽くなったみたい。 一人じゃきっと まだぐるぐる悩んでた。 彼の横顔を見上げる。 あたしの心境の変化に気付いているのかいないのか 麻斗君はあっさりと言った。 「ま。フラれたらいいんじゃね?」 「え?」 「マサキだっけ?その男」 「……」 「お前をこれだけ泣かすんだから」 ――トクン。と鳴った。 胸の奥の方が。 言いながら見落ろす目が優しくて。 「もう泣くなよ」って言われてるみたいで。 「……ふふ」 「何。気持ち悪い」 「笑っただけだし!」 「なんで笑うんだよ」 「……麻斗君、優しいなぁと思って」 「は?どこが?」 言われたことねー。と言いながら空を仰ぐ。 何をやっても絵になる人だな。 そんなことを思いながら隣を歩く。 校門を出て空を見上がると 夕焼け空は灰色に変わり、星の数が増えていた。 「乗る?後ろ」 自転車の荷台を指さされ、 「うん」 頷いた。
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