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緑あふれる道を通り向け、昔ながらの商店街を通り抜けると、あっという間に駅に着いた。 木造の小さな駅。 もちろん電車は単線。 あたしはそっと荷台から降りて 「送ってくれてありがとう」 「ん」 別れの挨拶をしたのに、麻斗君が自転車を止めていて 「どしたの?」 「電車。来るまで時間かかるだろ」 そう言って、先にホームへ入っていった。 狭いホームにはチラホラと人がいた。 ローカル線は、30分に一本(ひどい時は一時間に一本)しか電車が来ない。 時刻表を見ると、電車は5分前に出発したばかりだった。 あたしたちはブルーのプラスチック製の椅子に腰かけて話し出した。 「麻斗くんの町ってホッとするね」 「そうか?」 これは前から思っていたこと。 麻斗君の町は、あたしの街よりも田舎で。 統一感がある。 あたしの街のように、山を削り田んぼを埋め立て、家やスーパーを立てていないから。 コンビニさえ見当たらないこの場所は、人工的な光が少なくて、穏やかで。 時間がゆっくり流れている気がする。
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