137人が本棚に入れています
本棚に追加
毎日毎日、病室に来ては息子の傍から離れようとしない俺に、越智の母親も、初めは感謝し、涙すら見せていたものの。
次第次第、恐縮するようになり、やがては不快感をあらわにするようになった。
「友達思いでいてくれてありがとうね、でも…あなたにも、自分の人生があるのだから」
遠まわしだったが、あきらかに「もう来てくれるな」と言わんばかりの母親の言葉に、俺はついにキレてしまった。
色々なことが、俺の中で限界に達していたのだ。
愛する男が、二度と目を覚まさないかもしれないという現実を突きつけられて。
その男に対し、俺はあくまで「他人」としかみなされず「除け者」にされていることが。
そして、このまま永遠に越智を失ってしまうのでは…という恐怖が。
そんなあらゆることが俺を追い詰めていた。
だから俺は、ふたりの関係を母親にバラした。
彼女が無頓着にも全く気づいていなかった俺たちの薬指の指輪の、その意味も何もかも。
その後すぐ、越智はどこか別の病院へと移された。
越智の両親とも、一切連絡が取れなくなった。
越智の「家族」でも「配偶者」でもない俺は無力だった。
そして俺は越智を失ってしまった。
半身をもがれた思いで、俺はただ息を吸って吐くだけみたいに生きてきた。
もう身体が呼吸の仕方すら忘れてしまえばいいのにと。
心臓が脈動の仕方を忘れてしまえばいいのにと願いながら。
でも、そうやって酒に溺れても何をしても、俺の心臓は鼓動を止めてはくれなかった。
そんな時に、アイツが俺を犯した。
酔ってつぶれた俺を介抱すると見せかけて連れ帰り、無体の限りを尽くしやがった。
最初のコメントを投稿しよう!