越智と俺

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 毎日毎日、病室に来ては息子の傍から離れようとしない俺に、越智の母親も、初めは感謝し、涙すら見せていたものの。  次第次第、恐縮するようになり、やがては不快感をあらわにするようになった。    「友達思いでいてくれてありがとうね、でも…あなたにも、自分の人生があるのだから」  遠まわしだったが、あきらかに「もう来てくれるな」と言わんばかりの母親の言葉に、俺はついにキレてしまった。  色々なことが、俺の中で限界に達していたのだ。  愛する男が、二度と目を覚まさないかもしれないという現実を突きつけられて。  その男に対し、俺はあくまで「他人」としかみなされず「除け者」にされていることが。  そして、このまま永遠に越智を失ってしまうのでは…という恐怖が。    そんなあらゆることが俺を追い詰めていた。  だから俺は、ふたりの関係を母親にバラした。  彼女が無頓着にも全く気づいていなかった俺たちの薬指の指輪の、その意味も何もかも。  その後すぐ、越智はどこか別の病院へと移された。  越智の両親とも、一切連絡が取れなくなった。  越智の「家族」でも「配偶者」でもない俺は無力だった。  そして俺は越智を失ってしまった。  半身をもがれた思いで、俺はただ息を吸って吐くだけみたいに生きてきた。    もう身体が呼吸の仕方すら忘れてしまえばいいのにと。  心臓が脈動の仕方を忘れてしまえばいいのにと願いながら。  でも、そうやって酒に溺れても何をしても、俺の心臓は鼓動を止めてはくれなかった。  そんな時に、アイツが俺を犯した。  酔ってつぶれた俺を介抱すると見せかけて連れ帰り、無体の限りを尽くしやがった。
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