Side C episode. 1

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Side C episode. 1

 建物の中から香る肉や塩の匂いと、花の匂いは別の所から漂っているようだった。どちらから行くか思案したが、肉等の匂いのする方は熱気を感じる。私は熱いのが苦手だ。しばらく時間をおいて冷めた頃に訪れるとしよう。まずは花の匂いのする部屋に向かうことにする。 「あらかわいい」  部屋の中では人が花をいじっていた。人の一匹が何やら話しかけてきたが、理解はできない。無論、そんなこと気にも留めず周囲を見回す。人は花を小さな皿の上で立てているようだ。たくさん立てたほうが強いのだろうか。詳しいルールはよくわからない。見れば立てている花は、部屋の隅にある容器の中から取り出しているようだ。底に水が張られて、立てかけてある。 (食べやすいように置いてあるな)  少しだけ拝借して、葉っぱを食べさせてもらう。この時期は草を妙に食べたくなる。食べた後は気持ち悪くなってしまうにもかかわらずだ。 (うん、いけるな) 少しだけのつもりが、つい夢中になってしまう。時間を忘れて、葉も茎も堪能してしまった。だから、背後から近づいてきた人の影に気が付かなったのも止むを得ないと言えるだろう。 「あ、コラ!」  いきなり大きな声を出されて、私は思わず逃げ出してしまった。
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