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佐倉が僕に好意を寄せていたことは、以前から知っていた。
僕の背中に、痛いほど彼女の視線を感じていたから。
猫背で、いつもおどおどしていて、いじめられっ子の、後ろの席の女の子。
ずっと、僕に助けを求めていたのに……。
僕は最後まで、彼女に手を差し伸べることができなった。
「ごめん、佐倉」
彼女には、謝っても謝りきれない。
僕が逃げなければ、僕が目を逸らさなければ、彼女は生きていたかもしれない。
佐倉、僕は君に贖罪をさせてほしい。
もう二度と逃げたりしないから。
だから見ててよ、佐倉。
佐倉は……理子は、きっと小説の中に生き続ける。
僕も、彼女の見ていた世界を少しでもこの目に焼き付けたいと思う。
彼女の歩んできた軌跡である古びた本屋さんから、僕の新しいスタートが始まった。
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