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本屋さんの目の前の、ちょうど木の陰になっているベンチに腰をかけ、購入したばかりの本を手にとった。
さぁ、と生暖かい風が青々と生い茂った木々を揺らしていく。
僕は、「告白」という名のついた最後の短編を読み進める。
主人公の少女、理子がクラスメートの井上君に恋に落ちる話だった。
井上って僕と同じ苗字じゃん、なんて小さく笑う。
『 「井上君、私はずっと貴方のことが好きでした」
固まってしまった井上君の前に、理子が恋心を告げた。 』
この一文を目にしたとき、頭をガーンと殴られたような強い衝撃を受けた。
理子……。
佐倉、理子。
欠けていたピースが埋まるように、佐倉理子という名前が僕の胸にこだました。
彼女が最終章を破り捨てた理由、それは……
『 「ありがとう」
井上君は理子を腕の中に抱き寄せて、桜の樹の下、二人は口づけを交わした。 』
佐倉、
なんで死んじゃったんだよ……。
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