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「なんで学校来てるの?」
「目障りだから帰れよ」
窓から差し込む暖かな日差しが睡魔を運んで来ていた。それなのにパッと顔を上げてしまったのは、教室内の不穏な雰囲気を察知したから。
新学期早々、彼女はクラスの不良グループに目を付けられていた。
リーダー格の男子が彼女の机を蹴り上げ、彼女が椅子から転げ落ちた。
当然、前の席に座っていた僕にも振動が伝わる。
「お前、マジで消えろ」
彼らが吐き捨てた言葉に、胸がバクバクと動悸を打つ。
僕も昔、彼女と同じようにいじめられていた時期があったから。
「……っ」
彼女が何かを決意したように拳を握り締め、スカートの埃を払いながら立ち上がる。
こっそりと彼女の様子を伺っていた俺は、机に顔を突っ伏した。
彼女は読書を再開したのだろう。ぱらぱら、とリズム良くページをめくる音が耳に届く。
牡丹色のブックカバーに包まれた文庫本を、彼女は愛読していた。
どうして、何度も立ち上がるのだろう。
面と向かって悪口を言われても、身体に傷を負わされても、彼女は決して本を手放すことはなかった。
あんなことが起こるまでは……。
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