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僕は彼女から目を逸らし、窓の外に目を向ける。空は重々しい灰色の雲で覆われていた。
放課後、こっそりと佐倉の引き出しに返しておけばいいや。なんて、僕は能天気なことを考えていた。
もう、彼女と二度と会えなくなるなんて思いもせずに……。
―――ガタン
彼女が椅子から立ち上がり、教科書の入った通学カバンを振り回して、僕の頭を殴る。
「痛っ」
一瞬何が起こったのかわからなかった。目の奥がチカチカして、ズキズキとした痛みが僕を襲った。
なんで?
彼女が僕の手から本を取り返し、ページをビリビリと引き裂いた。紙切れになった一部のページを、彼女は自らのポケットの中へ押し込んでいる。
ぐにゃりと歪んだ視界の中で、彼女は大粒の涙を瞳に溜めて僕を見ていた。
なんで?
呆然としているクラスメートの前で、彼女はそのまま何も持たずに走って出て行った。
それっきり、佐倉は二度と教室に戻ってこなかった。
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