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カツカツと、革靴の底が意外に響く音をたてる。ざわつく胸の鼓動が、鼓膜を破りそうとすら感じた。響く靴音が重なって聞こえ、スパイ映画みたいにおおげさに辺りを見回す。
見上げたそこに漫画のキャラの大きな顔があり、息と悲鳴を飲み込んだ。
(俺が提げた看板だよ……)
ロマンティックな恋愛もののヒーローを睨み付け、虎谷は胸を撫で下ろした。途端に、何かがパタリと落ちる。
息を詰めて音のほうを見ると、ハードカバーの書籍があった。平積みのそれは少々ずれていたが、きちんと「持ち場」に積み上がっている。
(あるよなー、ちょっと斜めってたのが重力に逆らえなくて)
必死に恐怖をこらえていたが、パタリパタリと次々書籍が落ち、虎谷は焦り、あちこちを照らす。看板やポップに描かれた人物が、笑い出す。
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