現れた裏

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 さらなる変事が起きて一週間。有河の焦燥が足の爪先まで詰まって見えた。  整えるのを手伝うしかできない歯痒さに、明るさが売りの虎谷も秘かに苛立っている。  昼休みにバックヤードで大好きな焼きそばパンをかじりながら、虎谷はその味もあまり感じていない。 (砂を噛むって、こんな感じ?)  試合に負けたときでも、こうまでの無力感はなかった。相手は見える人間だ。今は実力で敵わない相手でも、いつかは倒せると楽観できた。 (けど、透明人間じゃ……)  人間なのか、とセルフツッコミを入れながら、虎谷は傍らを見やる。そこには姿勢よくソファに座る有河がいた。背筋を伸ばし、決然と弁当箱から玉子焼きを口に運ぶ様は、絵のように優雅だ。BGMすら響く気がする。優雅さのうちに秘めた苛立ちは、隠せないが。  店員誰もがそこはかとなく苛立つさなか、憔悴しきった店長がバックヤードにきた。咳払いした彼は、一時的に閉店しようとのたまう。誰もが力なく頷くが、たぶんあの人だけは、と虎谷が頭をもたげる。けれどあの人ーー有河も、こっくりと頷いていた。
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