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ヨーグルト味もその7種類のうちのひとつだ。俺は今それを軽
く咀嚼し、その時のことを思い出していた。ほんの少し前のこ
となのに、かなり過去の会話のような気がしてならなかった。
この日を境に俺達の恋愛感情は、彼女がくれたキャンディーの
様に、とけて小さくなっていった。
3
風呂から上がり、髪の毛が乾きかけた頃涼子に電話をかけた。
2、3、4回… コールはしているが、出る気配がない。居な
いみたいだ。pm11時。デジタルの数字がどんどん変化してゆく。
11回コールして出なかったら切ろう。そう思って受話器を耳に
当てたまま、50回まで待ったが誰も出てくれはしなかった。
「今日は残業」「明日は友達と会うの」「歯医者の日なの」な
どと一週間、涼子は俺から離れてすごした。唯一の救いといえ
ば「水曜日は大丈夫」という言葉だけだった。
とんでもなくスローモーな時の流れを越え、やっと火曜日の
夜にたどり着いた。なのに彼女は電話に出ない。この数日で俺
は溜め息と焦慮が癖になり、笑う機会が少なくなってしまった。
苛立ちを冷やすため、缶ビールを飲んだが旨くなかった。キャ
ンディーをかじってもまずい。不安が俺の味覚をだめにして、
ますます気持ちを落ち込ませた。明日、本当に涼子に逢えるの
だろうか? このまま逢えなくなるのかも… そんな気持ちに
駆られた。それだったらせめてサヨナラぐらい言いたい。
いや違う。俺達は恋人だ。少し前の様に付き合いたい。一
緒にいる時間を持ちたいだけ、何処かへ行ったり、話をしたり、
抱き合ったりをしたいだけなんだ。そこらへんのカップルのよ
うなそれを…。
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