一話

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一話

 轟音――。  鉄筋コンクリートの建造物は瓦礫と化し、砂塵を辺りに噴き上げながら吹き飛んで行く。骨の髄に残る振動は躯の自由を奪った。神経に錐を捩じ込むの様な激痛の後、鈍痛が躯全体に広がり燻る。  危機的状況ではあるが、先の砂塵が視界を遮ることにより目眩ましとなって彼方からは見えなくなっている。   「まあ、それは俺も変わらないんだが」  思わずそんな台詞が口先から溢れそうになるのを堪える。轟音は消え、辺りに静寂だけが残った。周囲に人は居ない。全員避難したか死んだかしたのだろう。すると舞い上がった粉塵を掻き分けるように重低音が断続的に響く。今回の敵は視界が遮られると矢鱈に攻撃をばら蒔くような事はしない。  一歩、又、一歩と周囲を警戒しながら索敵して、俺の潜む位置を割り出そうとしている。敵が足を上げる度に、油圧式の駆動機関がそれ特有の音を出す。戦力は雲泥にして此方が圧倒的不利。生身や、例え堅い甲殻を持つ改造生物とて必ず弱点は持っているが、生憎と敵は強化骨格に追加装甲を施した奴だ。中身である操縦者は人間とは言え先ずはあの鎧を突破しないと決定打は与えられない。     
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