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家を出て階段を降り、エントランスを抜け駐車場に向かうと、遠くの方で真路花の声がする。
ベランダから、両手で手を振る彼女。
「いってらっしゃーい!」
思わず顔がにやけそうになるのを手で隠した。
自身も手を振り返すような柄でもなく、小さく片手を上げすぐに背を向けた。
これ以上見ていると、今すぐ帰りそうになるからだ。
_________スタジオにて。
順調にレコーディングは進み、この調子ならすぐに上がれそうだ。
「アイシ、声調子いいな。曲の出来もまずまずだ」
「やっぱ新婚で潤ってるからじゃな~い?いいなーアイちゃん!」
「俺達にも幸せわけろや!そろそろ弁当食おうぜ」
英介が風呂敷に手をかけるのを、全力で阻止する。
誰がやるか。
「なんだよ!よこせよ!それ重箱じゃん!」
「どうみたって俺達への差し入れでしょ!」
「まさか一人で食うんじゃないよな?」
うるさい輩はほっといて、俺は弁当を一人で食い始めた。
どれもこれも、やっぱり美味い。
やっぱ……
「結婚……最高」
「心の声思いっきり出ちゃってるよ!」
「チキショー!!なんでアイちゃんばっか!」
「まあ、いい曲生まれたらそれでいいが」
その後郁と英介にボコられて、弁当を略奪されたのは言うまでもない。
おしまい
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