最後

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最後

『……そうですね、あれから色々ありましたね。娘さんが事故に巻き込まれたと知ったときは、心臓が止まりかけましたよね。お孫さんが賞状をもらったのをご両親より喜んでたのは、私たちだけの秘密にしておきますね。それにしても……ふふ。知ってますか、あのバカのこと。あのバカ、あなたがどんどん老成していって、心が穏やかになっていくにつれて「ケッ、こんなところ居心地がクソ悪い」とか言って、消えてしまったのですよ。いつも悪たれたこと言って、捻くれた性格をしてた虚け者でしたが、いなくなると寂しいものですね。また久しぶりに言い合いをしたいという気持ちも……正直、なくはないです。あなたも、まもなく消えてしまいそうですね。そうなると本当に寂しくなりますね。あ、ほら、呼んでますよ。あなたが一番大切な、もっとも大事な家族が……』 「……ああ、おはよう。もう、お昼かな?」 「あ、お爺ちゃん。起きた? ちょっと待ってね。おかーさーん、お爺ちゃん起きたー!」 「え、お爺ちゃん起きたの!? ちょ、ちょっと待って今手が離せないの! すぐ行く!」 「ああ、いいから。ほら、おいで。もっと顔を見せておくれ……」 「うん、お爺ちゃん。だいじょうぶ? なんかずっと元気なくて入院してるって聞いたけど。病気じゃないんだよね?」 「ああ、違うよ。元気いっぱいだ」 「クス、元気いっぱいには全然見えないよ。もう歳なんだから、無理しないでね。長生きしてほしいもん」 「そうか、ありがとう。……それにしても、お前は若い頃のお母さんにそっくりだな。凄く美人さんだ」 「お母さんは遺影の中のお婆ちゃんに似てるって言ってたよ。ねえ、お爺ちゃん。お婆ちゃんって若い頃にその、亡くなっちゃったんでしょ? 悲しくなかったの?」
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