私とパンティの甘美な出会い。

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あれは私が下ろしたてのスーツに袖を通し、春の木漏れ日にデザインされたアパート通りを歩いていた頃の事だ。 外の世界と内の世界とを繋ぐ境界線には眩いばかりの光沢オパンティス達が、風に揺れて遊んでいる。 心なしかいい匂いすらする。それは幻想かもしれないが。 ーーそれは僅かばかりの『興味』だった。 ーーそれは僅かばかりの『色欲』だった。 ーーそれは僅かばかりの『好奇心』だった。 ーーそれは僅かばかりの『探究心』だった。 私は思ってしまったのだ。あのオパンティス達を被りたい。被って思い切り深呼吸をしたいと。汚れがあれば鼻先で擦り、遊び、可能ならばレース端の刺繍部を口の中に含み、上歯と舌先で甘噛みをして一日中堪能していたいと。 そして『敢行』するのだ。楽園(エデン)への扉を、溢れ出る私の性欲カタルシスで爆破四散させるために。 楽園への扉の厳かな金細工や、美しい紋様などに興味はない。まして、それを「綺麗だ」「美しい」などと、外見の造形に対して賛否を問う愚者と同様の趣味などない。 大切なのは中身である。 『スカート』の中身である。 もう一度言おう。 大切なのは中身である。 『スカート』の中身である。 パンツスタイルの強固な守りで固められた城塞オパンティスも捨てがたい。 アパートのブロックが積み上げられた、差し詰め『性殺しベルリンの壁』と呼べなくもない建造物をよじ登る。 楽園はすぐそこまで、手を伸ばせば化学繊維とポリエステルで作られた肌触りの良い禁断の果実に届くのだ。 人は私の事をこう呼ぶだろう。 ーー『下着泥棒』と。 呼称など、この世界においてなんら意味を持たない。呼びたければ呼べばいい。蔑みたければ蔑めばいい。 オパンティスを被り、中央最下部を舌先でテロテロできれば私は満足であり。最高に満たされた気持ちになる。 やっとの思いで手にした繊維質のオパンティスは私の気持ちを激しく高揚させる。メトロノームの様に振り幅最大で、溢れ出る激情を止めることが出来なかったのだ。 ーー私は禁断の果実を口にした。 文字通り、口にしたのだ。 耐えきれなかった。後光差す神々しい造形物を思い切り頬張ったのだ。 私の唾液と混ざり合い、柔軟剤の香りが口に広がる。 「あの......どちら様ですか?」 それが、オパンティスを頬張る私と、彼女との出逢いであった。
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