リビングデッド

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セルシン、バランス、ワイパックス、コンスタン…………  白というのは清潔な色であると人は言う。 けれど私は、「色を無くした色」だと思うのだ。 形の有無に問わずどんなものにも色はある。 それらをたとえばアルコールを使って拭って、拭って、擦りきれるほど強く擦り付けて、無くして。 けれど、たとえ色がなくなったとしてもそこに存在しているものを無いとは言えない。 では、そこに残った「それ」は一体なんなのだろう。  蛍光灯の発光が壁面を跳ねまわる。 廊下は白衣を纏った人間達がバタバタと出たり入ったりを繰り返していた。 さながら神々の戦争を戦う戦士の魂を選定するヴァルキュリアのようだ。 かなり騒々しい。 北欧の神話は昔から好きだった。 他のどんな物語とも違う退廃的な世界観の中で全てが終わっていく前提で語られる数々の物語。 半神であるが故に彼らは運命に従順だ。 まぁ、与えられた仕事であるのだから当然であるべきだしそれによって騒がしくなってしまうのも仕方がないのだが。 神話に生きる神々は己の存在を絶対とするものが多い。 それは私達人間だってそうなのだろうけれど。 だが、肉体を失い、精神のみの存在となってまで在りたいとは思わない。 少なくとも、私は。  いつか二人で遠い国を旅をしてみよう。 そう言っていたのは誰だったか。 その答えは、もう私にしかわからないのだ。
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