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……塩酸ジフェンヒドラミン、 カギカズラ、チョウトウコウ、カノコソウ、サイコ……
――どれも「効かなかった」
翠さんが部屋を出ていくと、閉めきった部屋の中、直ぐ傍で、木々のざわめきが聞こえるようになった。
静かな世界。
時間が止まってしまったかのような、生をまるで感じないこの部屋で、私はそっと呼び掛ける。
「ねぇ、いつまで寝てるの」
応答はない。
応答はないことを確認する度、激しく胸の奥が焼ける。
次に強烈な眩暈と、吐き気。
この感情はきっと「苛立ち」に近いと思う。
ゆっくりと息を吸って、吐いた。
喉の奥が震えている。
そのままにじりよるようにして彼の鼻先に顔を寄せる。
弱々しい吐息を感じると、私を支配する強烈な感情が、本心が溢れ出してしまう。
――この静寂の中、呼吸の音すら聞こえないというのに、どうやら彼は生きているらしい。
本当に?
夢を見ているだけらしい。
私を無視して?
街中で二人並んで歩く男女を見る度、
妬ましい気持ちが沸々と沸き出て、
家に帰る度音の無い部屋に寂しさを覚えて。
家族からも友人からも憐れんだ瞳で見られて。
何かをしようにも空虚な心じゃ没頭するのもままならない。
結局私は孤独で、
無為な時間を過ごすのは嫌だから仕方なくここへ来て。
なのに貴方は、私を放って一人幸せな夢を見ているの?
意味なんてない。
貴方がいなければ、生きている意味なんてないのに。
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