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「!」
「どうしたの?」
少年はパッと顔が明るくなったかと思うと、急に立ち上がり、身ぶり手振りを始める。
「う~ん……」
「がう~、がるがる♪」
「………」
なんだろうか。よくわかんないからハルカは水晶を取り出した。
「がう?」
「ちょっと失礼♪」
「!?」
ハルカはビシッと少年の額に人差し指を指すと同時に指先がにわかに輝く。
水晶には少年の今までの記憶が写っている。
これも修行のおかげ。頭の中のあらゆる記憶を辿ることができる。
「これは……」
歩き始めて間もない頃の少年が年若い青年に手を引かれてこの地にやって来る映像。
少年がワケもわからないまま、見通しのいい荒野に喜び走り回っていると、青年はいつの間にか消えていた。
「……」
「がう……?」
じゃあ、この子は……
ハルカの表情が険しくなっていたので、少年は心配そうに覗き込んできた。
「でもあなた、少しだけ人の言葉わかるみたいね」
「………あっち。村、ある」
「村?」
少年は南東の方角を指差した。
村に住んでいるのか?
「おまえと同じ人間いる。おれ、少しだけ会話、わかる。近くに水、ある」
そういって少年は笑顔になる。
水を飲みに行くだけか。村人の水飲み場なのだろうか。
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