第8話 最悪のダンジョンは扉の向こう側に

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俺が日中に外を出歩くことになるかもしれない。想像しただけでも吐き気が止まらない。俺の活動時間はあくまでも夜中が基本だ。大原則だ。それ以外は残念ながら受け付けられない。。身体が拒否反応を起こす。 俺みたいな、超が付くぐらい夜行性にとって日の光を浴びると果たしてどうなるのか。。大変恐ろしいくて身の毛もよだつ。 い、今からでもまだ間に合う! 「ごめん、日曜日無理だわ」 たった11文字をリコに伝えるだけじゃないか!それで、全ての不安は解消されるじゃないか。 「ま、まずは断りの連絡を・・・」 俺はここで大事なことに気がつく。今までは常にリコからの通話にたいして相槌だとか、疑問になったことを聞いたり、伝えたいことを一方的に伝えていただけであった。 断りの電話を入れる。俺から? そんな大それた経験をしたことがないぞ?今までずっと携帯を持ったことがない、家の電話にも出たことのない俺が自ら電話をする(・・・・・・・)?あり得ない。。 ゲームでなら話せる。。ゲームでなら。。。 初めて話す相手に向かって「何用だ?ルーキー」とか言っちゃうくらいの俺だぞ?もう無理だ!無理ゲーだ。。 俺から通話ボタンを押す勇気は・・・ない。 そ、そうだ!!コメントだ!コメントを送ればいいじゃないか! 簡単なことだ。送りつけるだけなんだから。 ・・・いや、待てよ。もしリコがPCを立ち上げずに日曜日を迎えてしまえば、リコは現地で待ちぼうけを食らうことになる。 それは、責任を取る(つきあってる)男性としてどうだろうか。今後のクエストにも影響が出そうだ。 今は土曜日の日中。。 明日の本番、いきなり外を出歩けば1分と持たず精神が崩壊しゲームオーバーになりかねない。 試すなら、今日!今しかない!! き、近所。まずは近所を出歩いてみよう。日中の外気に触れてみて、何が我慢できそうで、何が駄目か検証してみよう。 いいか、俺。よく聞くんだ。 これはゲーム。ただのゲームだと思え。 凄くリアルなVRなんだと錯覚しようじゃないか、そうだ、そうしよう! この扉の向こうには、フリーフィールドが拡がっている。ただ、違う点はモンスターが社会人(ゾンビ)なだけだ。 必死の暗示や即席の思い込みは、脆く弱いが何も纏わないよりかは数段マシだ。 俺は万全の準備をしてからでなければあの玄関(Hell Gate)を突破する自信がない。。
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