第8話 最悪のダンジョンは扉の向こう側に

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お互い向き合う。距離は2メール。 向こうから一向に話しかけてこないが俺の姿を見て嬉しそうだ。喜んでいる。 ってか、本当に日本人じゃないのかもしれない。日本人なら、俺みたいな一般的な日本人を見てもピクリとも反応しないはずだ。 そうか。この二人は訪日客か?! 先程からゴーグルのせいで目の前の世界がオレンジ一色で統一されている影響でよくわからないが、ゴーグルを外せば海外の方だとわかるような容姿なのかもしれない。 相手は外国人。 海外の方となれば話は別だ。日本人と話すよりまだ気が楽だ。日本には、おもてなしの文化がある。 俺は、この文化は嫌いではない。特に、不馴れな土地に来た新参者に対して優しい世界であることはなお良しだ。素晴らしいことだと思う。 俺もあのゲームを初めてしたときは、周りのプレイヤーから沢山教えてもらった。効率良く経験値を稼ぐ方法や、戦闘のいろはなど。今でも役にたっている。 この日本にきた彼らは、俺をみて何かを言っていたのは、もしかしたら道を尋ねたのかもしれない。 えっと、何を言えばいいんだ?まずは挨拶か。 「ハーイ」 俺の知っている単語を並べようと思ったが咄嗟には出てくるわけもなかったので、とりあえず挨拶だけした。 が、返事がない。むしろ俺が声をかけて近づいたせいかビックリしたまま後退りして二人でヒソヒソ話しを始めているじゃないか!!外国人と言えど、いきなり声をかけるのはマナー違反だったのかもしれない。何やってるんだ、俺。。 (ねー。このゴーグル、日本人じゃないんじゃない?) (あぁ、ぽいな。日本で調子こいてる外人には洗礼を受けさせないとな。金ゆすってみようぜ?こいつビビるんじゃね?) ど、どうしよう。。さっきからあの二人は俺の方を睨みつつ笑っている。 折角日本に来てくれたのに、このままでは俺がこの二人を絡んでいるみたいじゃないか!!いやいや、違うんだ。俺は怪しい者ではない! 何か、何かこの二人が心を開くようなことはないのか。。 英語が喋れたらいいのだが、生憎俺は自宅警備員なもので、何一つ世間のこととか、勉学についての知識はほぼ無に近い。 外国人さん達よ、こんな俺を許してくれ。。 とりあえず、彼らとのコミュニケーションを断たないようにしてみよう。外国人NPCが今後アップデートされる可能性もあるし、対応できないと、ゲームの最前線から遅れをとりかねない。
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