第8話 最悪のダンジョンは扉の向こう側に

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さて、疲れてきたしフィナーレといきますか。 俺は、先程から攻撃してくる外国人を斬って終わろうとしていた。もちろん、斬る『フリ』だ。扇子なんかで斬れる筈がない。 俺には1つの野望と言うか、やりたいことがあった。それは、殺陣では最後のシーンをかっこよく終わりたいのだ。 具体的には、最後に刀を交えた敵とお互い抜刀をして、交差してから5秒後に俺が膝をついて倒れそうになり、相手は無傷で笑っていたところ、実は俺にしっかり斬られていた為、時間差で倒れてほしいのだ。 そして俺が一言。 「またつまらぬモノを斬ってしまった」と。 くぅー!!言いたい!早く言ってみたい! 人生で一度は言ってみたい台詞シリーズの1つなんだよ、俺!!まさか現実世界で言うなんて想像できない! そう思っていた直後、男が走りながら斬りかかろうとしていたので、こちらも残りの体力を使って走り出す。最後のシーンとしては完璧。この上ない状況。 勿論、外国人さんの攻撃を受けないように避けつつ、俺もわざと扇子を空振りする。殺陣だから。 そして俺は振り返ることなく扇子を腰に納刀した。 (ちっ!ゴーグル野郎、とうとう最後まで俺の攻撃を避けやがった。しかし、これを避けられる筈がない!!) 男は先ほどまで持っていたナイフを院長の方向に向けて構えた。男がずっと使用していたナイフは、スペツナズ・ナイフ。これは、ソビエト連邦の特殊任務部隊(スペツナズ)が使用していた特殊ナイフだ。 実は仕込みナイフで強力なバネが内蔵されており、刃の部分が時速60kmで射出するのだ。 (俺に背を向けたのは誤算だな、ゴーグル!!) 男は、院長の背後に向けて刃を射出した。 (よし!ゴーグルは俺の攻撃に気づいていない!!) さて、頃合いか。 院長は、振り返えることなく膝をつき始めた。。 「よっこいしょっと。。」 「な!!嘘だろ?!俺の射出(奥の手)すらゴーグルはよんでいた・・・だと」 奇跡とは常に美しい。 相手の攻撃を受けた演出をしようと、膝をついて屈んだため、射出された刃が院長の丸腰の背中に刺さることはなく、屈んだ院長の頭上すれすれを通過。大怪我を間逃れるという奇跡的な結果になったが、院長本人はその事について知る由も無い。
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