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カンカラン。
路上に落ちた刃の渇いた金属音だけが響く。一回も血に染まることのなかったナイフの刃は淋しそうにアスファルトに落ちていた。
ん?なんか落ちて来たぞ?なんだ、これ。。あぁ、外国人の作り物のナイフの刃先が取れたのか。まぁ、本物じゃないから壊れても仕方無いよな。
いや、待て。
解釈によっては、俺が武器破壊をしつつ斬り倒したようにも見えるからそうしよう!!その方が伝説の剣豪っぽい!
俺は落ちていた刃を拾い、振り向いた。すると先ほどまで戦っていた男は腰が抜けたかのように尻もちをつき震えながらこちらを見ていた。
ちがう!おしい!そこは尻もちじゃなくて、うつ伏せで倒れてくれないと美しくない。。。
えーっと、英語で『これ、貴方のですよ?』って何て言えばいいんだ?わからん。。疑問型だし、be動詞とか、動詞とかどう使うんだっけ?あー!!忘れた!ハイジ、クララ。どちらでもいいから今すぐ俺に英語を教えてくれ!!
とりあえず、
「えっと・・・切る。ユーの?」
見事に英語の部分で言えたのは『YOU』だけであった。それ以外は日本語でごり押し。所詮、院長が中学で英語を勉強していたのは5年くらい前だった。
『blade』という単語すら出てこないのはさすがにお粗末過ぎるレベル。
結果として、相手の男には「今からあの世に送ってやるからな?」と聞こえただろう。
ゴーグルをつけた上下ジャージ男。左手には無傷の扇子、右手には スペツナズ・ナイフの刃。
一度見たらもう忘れられない唯一無二の容姿。姿を傾くくらいなら誰でもできる。
しかし、院長は違った。
相手を煽りつつ全攻撃を笑顔で避けた。殺陣だと誤認したことで力むことなく避けることに成功してしまった。
結果として、院長から金を巻き上げようと絡んだ二人の目には、院長がカリスマ満載のラスボスにしか見えていないだろう。
不適な笑みを浮かべ扇子を扇ぎながら一歩、また一歩と詰め寄ってくる。
「ひぃ。。あ、あの。ご、ご、ごめんなさい。」
しかし院長は歩みをやめようとしない。そりゃそうだ。スペツナズ・ナイフの刃を落とし主に返そうとしているんだから。
「たたた、助けてくれ!!」
逃げ出す二人。しかし、振り向けばゴーグル院長が笑顔で追いかけてくるではありませんか。。
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