第8話 最悪のダンジョンは扉の向こう側に

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火事場の馬鹿力は凄い。 あんなピエロみたいな不気味な容姿に追いかけ回されるなんて悪夢以外のなにものでもない。明日、無事に太陽を拝みたい。 そんな気持ちで走っているのだろうか。院長は全く追いつけなかった。 「はぁはぁ。おい、待ってくれ・・・」 院長は剣豪でもなければ、英会話レッスンの受講生でもない。ただの自宅警備員だ。体力があるわけがない。わずか数秒で彼らを見失ってしまった。。 か、完璧だ。。。 彼らは完璧だ!! 本当に命乞いをしているかのような逃げっぷり。彼らは本当に殺陣が、そして日本が大好きなんだな。いや、恐れ入った。 しかし、忘れ物・・・なんだが。。 「痛っ!!」 小さな痛みが指先に走ったので、彼らの忘れ刃を地面に落としてしまった。俺は指を確認する。 すると鋭利な刃物で切れたかのように指に2㎝ほどの切り傷が出来ている。 えっ・・・!? なんで俺玩具の刃で指切れたんだ?何故だ、凄くヒリヒリするぞ? 院長は扇子を使い、治癒魔法を詠唱を始めた。が、魔方陣は地面に現れることはなかった。所詮ここは現実世界。いくらゴーグルで視界をオレンジ色に染めても異世界に来ているわけではない。 治癒魔法が使えない俺。それってつまり『何一つ技を持ち合わせていない』って事じゃないか。 そんな恐ろしい状態で俺は玄関の向こうに拡がっていたフリーフィールドに来ていたのか?今思えばそれって怖いよな。なんて恐ろしいことを俺はしていたんだ! こんな丸腰で、例えば怖い人に絡まれでもしたら精神が崩壊しかねない。知らない外国人さんと殺陣をして遊んでいる場合じゃないじゃないか!?と、とりあえず、家に帰ろう。。家は病院なんだから治癒アイテムは山ほどある。 外出してわずか30分もしないうちに俺は帰宅することになった。 こんな調子で明日の日曜日、無事に京都の祇園まで行って三次元のリコと会えるだろうか。。。 しかもリコは女の子で、ゲームの世界では責任とってよね(付き合って)と告白された相手だ。もちろん、それはゲームの世界だけの話で実際現実世界でも『俺は彼氏』ってわけじゃないにしても緊張するじゃないか! 明確な心づもりも出来ないままとうとう運命の日曜日を迎える。。
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