第9話 院リコ OFFなのに戦場へ

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電車、地下鉄を乗り継いで近くの駅である四条駅まではなんとかこれた。しかし、リコと待ち合わせ場所である駅は祇園四条駅だ。地下道で繋がっているとはいえ、徒歩で数分はかかる。 朝10時過ぎと言うこともあり、若者が溢れかえっていたがその間を縫うように急いだ。 待ち合わせ時間なんて過ぎている。ゲームで言えばタイムアップだ。クエスト失敗である。 ただ、急ぐ、走る。 足に疲労が溜まることを自分の身体で体験している。しかし、回復する術がない。 自然治癒しか許されていないこの状況はゲームの世界より残酷だ。 「やっぱり現実世界はクソゲーだ」 呟いたってなにも変わらない。わかっていても愚痴ってしまう。俺の悪い癖だ。 目の前の階段をかけあがり、少し歩けば待ち合わせポイントだ。 地上へ繋がる光がだんだん大きくなってくる。体力を絞り出してかけあがった。 階段を上りきった俺に拡がったのは、賑やかすぎるくらいの人の群れだった。 「は?ちょっと待ってくれ。多いわ!!」 この中かから一度も会ったことのないリコを探しだせって言うのか?高難易度すぎるクエストだぞ、おい!! 京都の街を侮っていた。まさか人間がここまで大量にいるなんて思いもしなかった。しかも待ち合わせしているであろうソロの女性プレイヤーも10人ほどいるため、特定のしようがない。 唯一、俺がリコの事を知っているのは『声』だけだ。アニメに出てきてもおかしくないくらいに澄んでいる声。声だけでもリコが今どんな表情をしているかわかるくらい、素直で真っ直ぐな声。 可愛いさもあり、あの声で頼られたら護ってあげたくなるくらい愛しい声。 しかし、女性一人ひとりに声をかけて確認するわけにもいかない。むしろ自宅警備員の俺にそんなイケメンスキルは持ち合わせてなどいない。 詰んだ・・・のか、俺。 思わず頭を抱えたとき、周りの声が耳に入った。 「なぁ、見た?さっきの子」 「あぁ、見た!女優さん並みだったな。誰かを探してるみたいでキョロキョロしている仕草が可愛い過ぎて思わず声かけそうになったわ」 「・・・そ、その子どこにいましたか!?」 確証なんてなかった。ただ、藁をもすがる思いで、勇気をもって二人組に話しかけてみた。 「・・・え?あ、あそこにいる子だけど?」 俺は教えてくれた人の指差す方向に目をやった。
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