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振り向いたコマリすは目を大きく見開いて・・固まったように・・暫く俺を見てた。
「クスッ・・コマリす、ボ―としすぎ」
その顔があんまり可愛くて持っていた扇子で照れ隠しにコマリすを扇いだ。
人の群れが減るのを見計らって俺たちも移動を始めた。
李人が何やら嬉しそうにニヤニヤしながら俺をみてた。
「コマリちゃん、凄くかわいいね!玲哉、ちゃんと告白したの?」
・・李人が小声で聞いてきた。
「・・・・・」
俺の沈黙に・・・李人が呆れたように俺の耳元で・・言った。
「え~?・・まだなの?信じられない!病院でチャンスあったでしょ?」
確かにあった・・でも俺は・・そんな気になれなかった。
コマリすの両親の謝罪は俺には胸が痛かった・・もとはと言えばコマリすは俺と澪の問題に巻き込まれてしまっただけだ。
なのに・・コマリすの計らいもあって・・コマリすの両親は俺に至れり尽くせりの対応をしてくれた。
俺の方が感謝しなきゃならないのに・・そんな俺が告白なんて・・できる訳が――
「あれ?コマリちゃんは?」
え?・・李人の言葉に俺は後ろを振り向いた・・後ろにいる筈の・・コマリすの姿がなかった。
数メ―トル先の人混みの中にもコマリすの姿は見当たらなかった。
「え~?コマリ、はぐれちゃつたのかな?」
橋屋の言葉に焦った俺は慌てて 来た通りを引き帰そうとした――
「玲哉!good.lucki!」
李人が笑って俺だけに聞こえるような小さな声で言った。
李人の思惑に感謝しながら俺は背中をむけたまま、片手だけ上げて応えた。
俺たちが歩きはじめてからまだ、5分くらいしか経ってない・・こんな短時間ではぐれるなんて・・コマリすのヤツどんだけトロいんだよ。
俺は心配と腹立たしさで一人言を呟きながらきた通りを急いで戻った。
アイツのことだ・・・今ごろ泣きべそかいてるにちがいな―――いた!
コマリすは殆ど歩き始めたばかりの入り口付近にいた。
「コマリ!」
ホッとした俺はコマリすを抱き締めた。
「バカ、心配させんな」
気が付くとコマリすの周りに阿月と海斗と・・・澪がいた。
俺は無意識にコマリすの前に立っていた・・澪から・・守るように。
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