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「俺たちも行くか・・」
正樹くんはあたしの手を引いて歩き出した。
澪さんのことに正樹くんは何も触れなかった・・あたしも・・何もきかなかった。
それぞれの胸の傷が癒える日は思ったより早いのかもしれない。
「お前、なんでさっきいなくなったの?」
あたしは・・浴衣が歩きにくいことと下駄の鼻緒で足が痛くて歩けなかったことを素直に言った。
「バカ、そういうことちゃんと言えよ」
正樹くんは、あたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれた。
「もう少し歩ける?」
「うん・・大丈夫」
正樹くんは祭りの人混みから抜けて神社の裏手にある小高い丘へ通じる小道の方へあたしを連れて行った。
まばらだが何人かの人たちも歩いてた。
小道といっても車が一台充分通る広さだった。
・・そう言えば加奈子と庄屋くんは、どうしただろう?
「ごめん。・・あたしのせいで庄屋くん達とはぐれちゃって・・」
「李人達なら大丈夫だよ。子供じゃないんだから橋屋と祭り楽しんでると思うよ」
「・・合流しなくていいの?」
「コマリは合流したいの?」
ん・・合流したいようなしたくないような・・でも・・本当は正樹くんと2人きりでいた――
「俺はコマリと2人きりがいい」
・・え?・・正樹くんに・・・あたしの心の声が聞こえた見たいで・・ドキリとした。
「・・コマリと2人だけでいたい」
正樹くんの言葉に顔を上げたとき、夜空に大輪の光りの花が開いた。
色とりどりの光が次々にあがり花が開いていく。
「俺・・もう一度・・・コマリと2人だけで花火が見たかった」
そう言って・・微笑んだ正樹くんの顔は・・光りの花をを背に・・息を呑むほど綺麗だった。
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