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正樹くんが連れて来てくれた場所は祭りの会場より少し高い位置にある丘の上だった。
真下にさっき通った神社の鳥居が見えた。
あたし達の他にも丘に通じる小道の上の方や下の方にも人がいた。
「ここ、穴場なんだ、地元の人は知ってるけどね」
夏祭りの会場は正樹くんの家のある地域になるらしかった。
あたし達は・・あの後夜祭の夜・・初めて二人で花火を見た時と同じように・・何も語らないまま・・暫く花火を見てた。
花火も終盤に差し掛かったのだろう・・一際、大きな音と共に美しい大輪の光りの花が開いた・・・周りが真昼のように一瞬、パッと明るくなった。
「・・コマリ」
突然、正樹くんが手を差し出した・・あたしは後夜祭の夜・・一緒に花火を見た時の事を思い出した。
あの時は・・確か・・リスのキ―ホルダ―をもらった。
「クスッ、今度は何をくれるの?何のキ―ホルダー?」
あたしは笑いながら手を差し出した・・え?・・手の平には何も無かっ――!
正樹くんは、いきなりあたしが差し出した手を握って自分の方へ引き寄せた。
あたしの唇に・・正樹くんの唇が触れてた。
驚いて目を見開いたあたしから・・正樹くんの唇が離れて・・もう一度重なった。
そして・・正樹くんはあたしを強く抱き締めた。
「やっと捕まえた。・・俺の可愛い・・コマリ」
「・・・・・」
うっ・・ど、どうしよう・・胸のドキドキが凄い。
「コマリのこと・・初めはただ気になって・・・いつの間にか目が離せなくなって・・愛しくて堪らなくなってた」
「・・・・・」
嘘・・あたしの・・・気持ちと・・おんなじだった。
「好きだよ・・コマリ。・・ずっと俺と一緒にいて」
あたしは自分に起きてる事が信じられなくて・・つい、自分のコンプレックスを口にしてた。
「で、でも・・・あたし・・トロくて・・」
「知ってる」
「鈍くさくて・・」
「知ってる」
「よう・・りょう・・わるい・・・し・・うっ――」
「おまけに泣き虫だろう?・・くすっ・・全部、知ってるよ。・・それが・・俺の可愛くて愛しいコマリだよ」
涙が溢れた・・・嬉しくて・・嬉しくて。
「・・うっ・う・・あたし・も・・正樹く・んが・・好き・・」
ぐずぐずに泣きながら答えるのがやっとだった。
「プッ、ほんとおまえって・・泣きながら告白するって面白すぎ」
正樹くんは笑いながら又、あたしを抱き締めた。
・・今度は、優しく宝もののように。
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