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「おはよう」
今日の正樹くんの登校時間は、あたしより遅かった。
お陰で自分の席に座れないなんて理不尽な思いを朝からしなくてすんだ。
「「「「おはよう!正樹くん」」」」
わらわらと正樹くんの周に女子が寄ってきた。
「おはよう」
正樹くんはいつもの笑顔で挨拶した。
良かった···いつもの正樹くんだっ――
「おはよう、日向」
へ?いきなり正樹くんがあたしに挨拶?
うっ···途端に周の女子がざわついた――
「いいな、私も正樹くんに私の名前、呼んでもらいたい!」
「ほんとだよ、私も正樹くから名まえ呼んで挨拶されたいよ」
「早く席替えあったらいいのに」
あたしの後ろで女子共の好き勝手なセリフが飛び交ってた。
あたしは、女子共が恐ろしくて後ろを振り向けず前をみたまま正樹くんに挨拶した。
「··おはよう――」
「え?日向さん声、ちっさ」
「ほんと、せっかく正樹くんが挨拶してんのに何?挨拶もろくに返せないの?」
女子共は益々、あたしをタ―ゲットに騒ぎ出した。
正樹くんの事が気になってチラりと正樹くんの方をみるとニッコリと優しげな笑顔で周りの女子を促し出した。
「ねえ、みんな、先生、来ちゃうよ。そろそろ自分の席に戻りなよ」
「え~もうそんな時間なの?つまんない」
「正樹くん、また後でね」
凄い···正樹くんの一言で、あっという間にみんなそそくさと自分の席へ帰って行った。
お陰であたしの周りから人がいなくなってホッとした。
正樹くんに感謝――
「おい、メガネ、お前、挨拶は人の顔見てするように教わんなかった?」
うっ··やっぱり、正樹くんは魔物だった。
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