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それは・・昼休みが終わる前のほんの僅かな時間の出来事だった。
「あなたが、日向コマリさん?」
その人は・・何時か裏庭で正樹くんと一緒にいた・・あの綺麗な女のだった。
近くで見る彼女は・・息を呑むほど綺麗だった。
「・・はい」
彼女の美しさに怖じけ付いてしまったあたしは・・只、小さな声で返事するのがやっとだった。
「あなたが玲哉にお勉強なんか教える必要なんてなくってよ。余計なことしないで」
彼女は冷たく言い放つと・・あたしの顔なんて見もしないで・・踵を返してた。
・・ショックだった。
ショック過ぎて・・あたしは彼女と会ったことを誰にも話せなかった・・・勿論、加奈子にも。
あたしは・・家に帰ってからも彼女の事が気になって仕方なかった。
恋愛は愚か・・殆どの事に経験値の低いあたしは・・考えても考えてもどうしょうもなくて・・・結果、庄屋くんに相談する事にした。
庄屋くんなら彼女の関係を知ってるような気がした。
その、翌日の放課後・・あたしは某ハンバーガーショップに庄屋くんと来てた。
こんなお店に入るのは初めてでドキドキだった。
「で、な~に?俺に相談て。何でも言って――あ・・ひょっとして玲哉のこと?」
庄屋くんの言ってることは当たらずも、遠からずってところだった。
あたしは早速、昨日の出来事を庄屋くんに話した。
庄屋くんの顔が何時ものふざけた顔から真剣な顔に変わった。
「それで、そのこと玲哉に話したの?」
「まだだよ。どうしたらいいのか・・わからなくて・・」
「・・そっか」
・・庄屋くんは何か考えてるようだった。
あたしは・・一番、気になってた事を聞いてみた。
「あの・・正樹くんと彼女の関係って・・付き合ってるとかなの・・かな・・」
庄屋くんはあたしの目を見ながら・・ゆっくりと答えた。
「澪は玲哉の元カノだよ。玲哉は一方的に別れたって言ってるけど・・・澪は・・そう簡単には諦めないと思うよ」
・・やっぱり・・そんな気はしてた。
なに?・・この気持ち・・胃の辺りがすごく重くて・・胸の奥から嫌な何かが込み上げてきて気持ちが悪かった。
庄屋くんから・・何時ものおちゃらけムードがすっかり消えていた。
それが・・尚更、あたしの気分を重くさせた。
「・・それで・・あたしどうすれば?」
庄屋くんは・・特にどうする必要も無い・・あたしの思うようにすれば良いと言ってくれた。
只、何かあったら必ず相談するように念押しされて・・あたし達はハンバーガーショップを出た。
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