プロローグ

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 父親の書斎でパソコン画面を見ながら、五十嵐岳(がく)は頭を 抱えていた。 「問題: 千利休の辞世の偈(げ)の意味を答えよ。  人生七十 力囲希咄  吾這寶剣 祖佛共殺  堤我得具足一太刀  今此時天抛  ルール: 先に答えた方が勝者とする。誤解答をした場合、   左腕・右腕・左足・右足の順に喰われる。勝者は褒美として   好きな願いが一つ叶えられる。敗者は魂が消滅する」  自分の意志で挑んだクイズ問題だが、ここまで難しいとは正直 思わなかった。千利休が戦国時代に活躍した茶人で、秀吉の逆鱗に 触れて切腹したのは知っているが、死ぬ前にこんな句を残していた なんて知らなかったし、読んでもサッパリ意味が判らない。 「やっぱりダメか」  試しにスマホで検索してみたが、専門家でも判らないらしい。 難易度AAAの超難問だから簡単にネット検索で調べられる問題が 出る訳が無いのだが、それにしても日本中で一人も解けない問題が 出るなんて、難しい限度を超えている。  それでも解かなければならない。対戦相手が先に正解すれば敗者 となって命を落とす。焦って誤解答すれば手足をスフィンクスに 喰われてしまう。それを考えただけでドッと汗が噴き出す。  「父さんを助けるにはやるしか無いんだ」   自分に言い聞かせる様に何度も呟く。元はと言えば軽い気持ちで このゲームアプリをインストールしたのが原因だ。まさかこんな風に 自分の命を賭けるハメになるとは思わなかった。 岳の脳裏にこれまでの出来事が浮かんでいた……。
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