第三章

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30分後。 「何か見た目はフツーのパソコンだけどね」  珍しそうにパソコンの裏側を見たりキーボードを叩くミサキ。 その時、ぬぼーっと悪魔が姿を現した。 「初めまして、私はこの魔術書を守護する悪魔ダンタ……」  それはダンタリオンだったが、気の毒に、姿を現したと同時に 「うわ!」と驚いたミサキの右肘がガンッと顎にぶち当たった。 「痛っ!」  しゃがみ込んで悶絶する悪魔。本来なら登場と共に人々を 恐怖のどん底に陥れるのが悪魔という種族の生きがいだが、 この悪魔は残念なことにカッコ良く登場出来ないことが多い。 「おっさん、大丈夫?」  タンゴに気遣われて気を取り直したか、咳払いをすると悪魔は 立ち上がった。 「改めまして。私はソロモン72柱の悪魔の一人、ダンタリオン。  この魔術書を守護して使用者にアドバイスを送るのが私の  役割です。レイ様に命じられて岳様にこの「ソロモンの鍵」  の使い方をレクチャーして差し上げます」 「おっさん別に良いよ。オレこのゲーム理解したから」  まさか岳に断られるとは思っていなかったダンタリオン、 「いや、あの、それでは後でレイ様に怒られますから。貴殿が  一人前のプレイヤーになるまでお手伝いしますよ……どうか、  お手伝いさせて下さい!」  およそ悪魔らしくない低姿勢で頼み込むダンタリオン。中央に 初老の男性の頭があり、その周りに12人の老若男女の頭が 並んでいるのだが、13人中8人は半泣き状態だ。 「岳、話だけでも聞いてやろうぜ」  見かねたタンゴが岳に言った。ミサキはと言えば珍しそうに 悪魔の衣装を引っ張ったり、男の子の顔に手を振っている。   「おお、助け船を出して下さるとは何と有り難いこと。私は  博学の悪魔ダンタリオン。牧野殿のことは辞書で調査済み  ですから貴殿以上によく知っています。貴殿が玉ネギが苦手  なことも、今まで買ったビニール傘が47本、支払った合計が  28200円だと言うことも、貴殿が将来第一希望の大学に  落ちることもよく知っています」
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