第四章

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 対戦バトル開始から一時間後。 「うおりゃああああああああ!!」  ミサキのハイパーハンマーが敵チームの頭にパコーンとヒットして最後の 一人がドテッと倒れる。 「ゲーム終了。勝者……『ブラジル棚干し』!」  アナウンスと共にガッツポーズする振袖姿のミサキ。ホッと胸を撫で下ろす 白魔術師の岳はローブを纏い、タンゴも僧侶の袈裟を着ている。 「これで無傷の4勝か。思ったよりも順調だな」 「どうでも良いけど、攻撃系がミサキ一人って一体どういうチームだよ。  回復系ジョブは二人も要らないだろ?」 「どっちも剣士じゃないしね」  苦笑いする三人。岳もタンゴも剣士では無くどうなることかと思ったが、 バトルが始まるとミサキのハンマーが一撃で敵プレイヤーを撃破して行く。 鉄の鎖に棘付きの鉄球が付いた凶器だが、流石は投手として活躍している だけあって、最強の武器になっている。 敵がミサキに攻撃を集中させても二人の回復呪文でHPがすぐ戻る。二戦目は 岳が敵プレイヤーを三人まとめて氷に閉じ込めた所をハイパーハンマーで 一度に撃破した。 「このチーム名なんとかならないのかな? 全然意味が判らないんだけど?」 「スマン、ダンタリオンが登録した時にテキトーに付けたから」  タンゴに詫びる岳。博学な悪魔は最近コーヒーに凝っていて、コロンビアや マンデリン、グァテマラ、キリマンジェロと豆を焙煎して飲んでいる。  特に豆を棚干しで乾燥させたブラジル・コーヒーがお気に入りだが、それを チーム名にする所が「バカ」と呼ばれるのだ。  ちなみにコーヒーの淹れ方にもこだわりがあって、サイフォン派なのだが、 コポコポ熱したお湯がスーッと登って行くのを見たくて、一度に8杯淹れて お腹をタプタプにさせている。 「振袖って普段着てないし、動きにくく無いか?」 「そうでも無いよ。なんかこの着物羽みたいに軽いし、小振袖だし、絵柄が  可愛いからアタシ気に入ってるわよ」  確かに薄い黄色地に赤い牡丹の柄のデザインはステキだが、ジャラジャラ 鎖の音を鳴らしてハンマーをぶん投げている姿は「可愛い」とはほど遠い。
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