第四章

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「よし、次の試合もこの調子で勝とう」  『ヴァルハラ』は対戦が終わると空中にディスプレイが現れて次の対戦を やるか、終了して元の世界に戻るか選ぶことが出来る。岳は自信満々で 「対戦」ボタンを押した。他の二人も身構える。  姿を現した対戦相手は一人の女性だった。白銀の甲冑姿に片手には 大きな盾を持っている。その背中には大きく立派な羽が生えていた。 「私はギリシア神話の闘いの女神アテナ。悪いがお前達は五つ数える前に  敗北する。こんな勝ち方は性に合わないが、人間達よ、許せ。」  静かにたたずむアテナ。掌を前に出して指折り数え始めた。 「5、4、3……」  数える女神は一歩も動く気配が無い。 「たった一人で相手するつもりとは随分余裕だな。ミサキ、ハンマーで  吹っ飛ばしてやれよ」  「任せて」  ミサキが鉄球をグルグル振り回してぶん投げた。次の瞬間、吹っ飛んだのは ミサキの方。 「な、なんだ?」  驚いてミサキの飛んで行った方に視線を向けたタンゴだがそのままガクッと 崩れ落ちた。 「悪いなボク。残るはキミだけだ。素直にギブアップしようか」  岳の前にいつの間にか二人の男が立っている。 一人は長身で褐色の肌。両耳が尖っていて右耳に月、左耳に 薔薇のアクセサリーを付けている。 もう一人は頭が鳥で上半身裸の人間、手には長い杖を持っている。 「ギブアップはしない」  キッと二人を睨みつけると魔術用の杖を構えた。 「ほお、オマエその構えは剣道経験者だな。魔術師なのに面白い」  顎に手を当てて愉快そうに笑う長身の男。 「さっさと止めを刺せロキ。コイツは時間を止められる我々には絶対  勝てない」  甲冑の女が足早に近付く。スラリと腰の長剣を抜くと岳目掛けて 一気に振り下ろそうとした。 「ちょっと待て、アテナ」  パッとアテナの手首を握って制止する長身の男。
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