第五章

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 中世の魔術書『ゴエティア』にはソロモン王が使役した72体の悪魔に ついて記されている。実際にはその順番に優劣は無いが、魔術書を 読んだ人は「魔力の強い順に書かれている」と勘違いしてしまう。 博学でプライドの高い悪魔にはその屈辱が耐え難く、これまで何度も 「革命」を起こそうと狙っては阻止されてきた。 「純次さん、20年前はアタシを使って「革命」を起こそうとしてレイに  止められたわよね。今度はアタシの息子を使って「革命」を狙って  いるって訳ね」 「あ、いや、その。無垢な少年の魂とソロモンの指輪を地獄の炎に投げ  込めば、念願の「革命」が……」 「だーかーらー、いい加減騙されてるって気付いた方が良いわよ。そんな  ルール存在しないから」  由香里が言う通り、ダンタリオンは他の悪魔から「革命」の情報を手に 入れてはチャレンジするが、ことごとく失敗している。博学だがバカなので 他の悪魔達におちょくられているのに気付いていない。 「さあ、純次さん。とっとと岳を返して頂戴な。それともアタシの頭突きと  モンゴリアンチョップ喰らいたい?」 「判りました、判りましたから!」  慌ててダンタリオンは魔法円を床に描くと呪文を唱えた。やがて眩しい光 と共に岳が姿を現した。 「岳!」 「おい、大丈夫か?」  駆け寄るミサキとタンゴ。ボーッと気が抜けた様に座り込む岳。遥か彼方を 見る様な目で呟いた。 「ミカリンが……いた」  
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