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リアル……この救われないちょっと残酷なところが、昔流行った『ほんとは怖いグリム童話』的にリアル=現実的だってことなんだろうか?
まあ、そういう意味ではリアルなのかもしれないが……。
「……ん?」
そんなことを思いつつ、なんとなく老婆店主を眺めていた俺は、ふとあることに気付く。
「あれ、耳が……」
なんだか、老婆の耳がさっき見た時より大きくなっているように見えるのだ。
某マジシャンのそんな手品ギャグを真似たわけでもないと思うのだが……いや、ただ大きくなっただけでなく、なんだか人間のものではないような……。
「んん、どうしたんだい?」
呆けた顔で見つめる俺に、老婆はその大きな三角形をした耳をピクピクと動かしながら尋ねる。
「あ、あの、その………なんだか耳が大きいなと思って……」
目の前で起きた不思議な現象に、訊かれた俺は思わず素直な疑問を口にしてしまう。
「ああ、これかい? これはお客さんの声がよく聞こえるようにさ。この歳になると耳がとおくなっちまってねえ。商売に支障が出るといけないからね」
だが、老婆店主はさして気分を害するでも訝しがるでもなく、さも当然と言うようにそう答える。
いや、いくら歳とって耳遠くなるからって、自分で耳は大きくできないと思うのだが……ん?
その説明になってない答えに心の中で密かにツッコミを入れる俺であるが、苦笑いを浮かべて老婆を見つめていた俺は、さらなる奇妙な変化に気づく。
「な、なんか目が……」
老婆の目が、もとから小ぶりな鼻眼鏡と釣り合いがとれないほど大きくなり、その上、まるで野生の獣が如く爛々と薄暗い店の中で輝いているのだ。
「め、目が……なんだか目が大きくなってます!」
某スマホの人気画像処理アプリを使ったでもあるまいに、耳に次ぐその奇怪な変化に今度は訊かれる前から心の声を漏らしてしまう。
「目が大きいのも、もちろんお客がよく見えるようにさ。本を探してるお客がいたら手伝ってあげたいし、こう言っちゃなんだが、昨今は万引きをするふとどき者も多いからね。特にこういう小陣経営の本屋にとって万引きは死活問題さ」
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