赤ずきん

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「大きくないと、おまえを食べられないためさっ! ガルルッ…!」 「うぐっ…!」  次の瞬間、そんな台詞とともに老婆の目がキラリと光ったかと思うと、俺は頭に焼けた火箸を突き立てられたような激しい痛みを感じ、レトロなセピア色めいていた目の前の景色は鮮やかな赤一色に塗り込められる。 「ぐ、ぐはぁ……」  それが自分の血の色であるとわかるのにさほど時間はかからなかった。  俺は大きく開かれた老婆の口で頭からパクリと喰われたのだ。  ……そうだ。これは『赤ずきん』と同じ筋書きだ……そういうことか……〝リアルなメルヘン〟というのいうのはこういうことだったのか……。    火のように焼ける激しい痛みもだんだんと感じなくなり、次第に薄れゆく意識の中で冷静にも俺はそんなことを考える。    そして、そんな冷静になってる場合じゃないのであるが、今、俺をかじっている老婆の薦めたのが〝グリム版ではなく、〝ペロー版〟の『赤ずきん』であったことを思い出し、ある最悪な事実に思い至る。  ……そうだ。ペロー版はグリム版と違い、猟師に助けられることなくオオカミに食べられたまま終わるんだった……と。                                          (リアル・メルヘン書房~赤ずきん~ 了)
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