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私は断罪され1人きりで帰るというのに同罪のはずの彼は何事もなかったかのように家に帰り、2人で仲良くケーキを食べるつもりなのだろうか。
そして…
彼はきっと愛しているのはお前だけだと呟くんだ。
私にもそうしたように。
チリチリしていたものが次第に大きくなっていくような感覚に襲われ、気が付くと店から出てきた2人の前に立ちはだかっていた。
彼はこの日初めて美也を見つめた。
何も言わないでくれと、このまま何も言わず帰らせてくれと懇願するような目で。
隣に並ぶ奥さんの方は意外と冷静な表情をしていたが、その瞳には強さが見えた。
か弱そうに見えて実は、とても気の強い女性なのかもしれない。
そう思いながらも美也は全く違うことを口にしていた。
「やっぱり彼は、敬太さんは返せません。今までのように半分を私にください。」
「はんぶん?」
繰り返した彼女の横で敬太は違うんだとか、あーとか意味のない言葉を繰り返してオロオロしていた。
恐らく不倫のことがバレた後も週の半分を私の家で過ごしていたことは話していなかったのだろう。
「納得して誓約書にサインをしたんでしょ。」
彼女は一歩踏み出し更に強く言い放った。
「もう2度と私たち 夫婦に関わらないで」
そう言い放って歩いていく彼女の後ろを
啓太は、まるで犬のように付いていった。
その後ろ姿を見ていると
やはり別れて正解だったような気すらしてきて笑いが込み上げてきた。
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