魔法の本屋

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「ねえねえ知ってる?魔法の本屋。」 「知ってる知ってる!」 「魔法の本屋?なぁにそれ?」 「えー!知らないの!?あのね、」 -学校の近くの商店街の細い裏道の先に一軒の本屋があるんだって。なのにその本屋は日によって見えたり見えなかったりするんだって。店主も日によってお爺さんだったり、若い女性だったりするんだって。 それでね?運良くその本屋を見つけて、中に入ったら-・・・ 「いらっしゃいませ。」 カランコロンと扉の鈴が鳴り来客を知らせると、本屋の主人は柔らかな笑顔でその客を迎え入れた。 客と本屋の主人の身長をゆうに超える高い本棚に、窮屈そうにたくさんの本たちが並んでいる。 恋愛、ファンタジー、SF、ホラー、童話・・・などなど、種類も豊富だ。 店の入口で本の多さとその見事さに目を奪われている客を見て本屋の“女主人”はくすりと笑うと「こちらへどうぞ。」と客を奥へと促した。 奥まで来るとそこにはテーブルと椅子が置いてあり、テーブルの上にはコーヒーが香ばしい湯気を立てている。 そして本に囲まれ創り出されたこの場は、これまた美しく、まるで異世界のようだった。 本屋の主人がくるりと後ろを振り返り、客と向き合う。そしてその手を下腹部の前で重ね、恭しく一礼するとニッコリと優しげに、しかしどこか妖艶に微笑んだ。 「さてはてお客人、あなたの望みはなんでしょう?ここは全ての夢が揃う店。願うものお一つなんでも叶えてしんぜましょう。本には全てが詰まってる。一冊手に取りページを捲れば途端に貴方は本の世界の住人に。黄金?冒険?なんでもいい。貴方のための一冊を私が選んで差し上げましょう。」 願いを口にし、選ばれた一冊の本を手に取ると、客は店をあとにした。振り返ると本屋の“老主人”が手を振っていて、その姿は店とともに裏道の暗闇に姿を消した。 『運良くその本屋を見つけて中に入ったら-・・・ -願いがひとつ叶うんだって』 カランコロンと鈴の音。 今日も新たな客が来た。 ここは全てが揃う店。 ページを捲ればあなたはその本の世界の住人に。 ただし帰ってこれるかはあなた次第。 「いらっしゃいませ。」 あなたの望みはなんでしょう? FIN
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