5人が本棚に入れています
本棚に追加
一、衝撃の出会い
一学期が始まって間もない春の日の学校の屋上。
俺の目の前には三人の同級生がいる。
そいつらが口元にうすら笑いを浮かべて、意地の悪い目付きで俺を見ている。
「オイ、ちゃんと持って来たか?」
こいつが、大隈亮。
一七〇センチくらいのバランスの取れた体格。
少し長めの茶髪に鋭い一重まぶたの瞳。
三人のボスだ。
「……うん」
俺はしぶしぶ学ランのポケットから二つ折りの黒い財布を出した。
「早く出せよ!」
「あ!」
俺の手から財布を引ったくったのが、短髪だが後ろ髪だけ少し長い小太りの三好賢。
「どれどれ……なんだよ。これっぽっちかよ」
財布から千円札を抜いて、ひらひらさせながらぼやいたのが小柄な今川元。
眉毛の上でそろえた前髪が軽く風に揺れている。
「今日はオレら映画行くから最低三枚は持ってこいって言ったよなぁ~?」
「そ、そんなこと言ったって、俺の月の小遣いは五百円だから急に三千円なんてムリ……ウッ」
俺はその場にうずくまった。
亮のパンチがミゾに入ったんだ。
「いいな。明日はちゃんと持って来いよ」
「……」
「オイ! 聞いてんのかよ!」
最初のコメントを投稿しよう!