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「ちょっと出来るからって、いつまでも調子に乗ってんじゃねえぞ」
「いいから。かかってきなさいよ。受け身取り損ねて怪我しても知らないから」
「お前こそ、俺の打ち込みかわせんのかよ」
「やってみればわかるっての」
「ちぇっ。クソッ」
亮は構えた手刀を上段に振りかぶって、上杉の頭に振り降ろした。
当たるっ!
と、思った瞬間上杉の身体は亮のすぐ横に並ぶように立っていた。
「覚えてる? 正面打ち入り身呼吸投げ」
「――!?」
ふたりから少し離れた俺の所からも、亮の顔が青ざめて行くのが分かった。
しかし、その表情を見られたのもほんの一瞬だった。
「それっ!」
上杉が亮の右腕に自分の腕を重ねて振り降ろすとカクンと亮の身体が前に傾いた。
かと思うと、今度は亮の身体が弾むバスケットボールのように起き上がる。
それにタイミングを合わせるように上杉が、人差し指を立てた右腕を亮の左のコメカミに突き刺すように振りかぶる。
「ィエイッ!」
亮はそのまま後ろに反るようにして放物線を描き、宙に放り出されて行った。
「スゲェ……」
俺は、呆然と呟いていた。
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