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「一人の阿呆が絶対に救うと、延命措置をやめなかったんだよ。そいつは好きな女の子が病魔に侵されてから、医者を志した。そしてそいつは医者になり、人生を懸けて彼女を救う方法を模索した。そいつは優秀ではなかったから、その方法を見つけた時にはお互い八十歳を超えていた。そう、君の治療法を考案したのは僕だ。どうしてもそいつには、彼女に言ってもらいたい言葉があったんだよ」  僕はすっかり禿げた頭を掻く。照れ臭さと、申し訳なさで次の言葉がなかなか選べない。術後すぐに会わなかったのも、彼女の第一声が「殺して」だったからだ。 「ほんと、阿呆ね」 「うん、阿呆だよ」 「どうせ、暫く会わなかったのは私に負い目でも感じてたんでしょ。勝手に生き返らせといて、根性がないのだから」  はぁ、と三木さんは溜息を吐く。図星も図星だから、どうにも返す言葉がない。やはり彼女には勝てない。  三木さんの手が顔まで上がり、何度か左右に動いた。 「で? 言われたい言葉って?」  今度の声に涙はなく、すっかりいつもの冷淡な調子に戻っていた。滅多な事を言えば殺されそうだ。
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