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これまで鈍色だった人生の色恋シーン。三木さんの狐目だけがひしめくそこに、僕の姿はなかった。しかし今こそ、そこへ僕の姿を挿入するのだ!
僕は息を大きく吸い込み、叫びに近い形で言葉を返す。
「もちろんそれは!」
しかし、そこで逡巡する。これは罠なのでは。僕は試されているのでは。早まってはならない。ここで選択を誤れば、振られる事は勿論、世間から間抜けと揶揄され、家族からも勘当、向かう所人無しのオンリーでロンリーな人生を送る事間違いなしであろう。ようよう考えるのだ。
彼女は、何故自分を好くのか? と問った。そして、その要因に神、ホルモン、運命を列挙した。この選択肢から選べば良いのだろうか? ならば、やはり運命というのがロマンチックだろう。女の子はみんな、甘いマロンとちょっと臭いロマンスが好きなのだと、何かの映画で言っていた。きっとこれが最適解、僕ってば超クレバー。
「運――」
だが僕は言い留まる。待つのだ、賢明な僕よ。
彼女は僕を試しているのだ。ほうれ見ろ。彼女、僕をこれでもかと見下してやがる。
さっきの三択こそ、罠に違いない。彼女の中では既に4つ目の模範解答があって、あえてそれを隠したのだ。
「一つ、聞いても良いかい?」
「ええ」
三木さんは首肯する。彼女がただ首を振るうだけで僕の胸は高鳴った。これが恋でなければなんであろう。別解のある者は挙手をせよ。
さぁ、ここでビシッと言ってやるのだ、第四の解答を。
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