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「その問いに、僕からの答えはないよ」  そして、僕も彼女と同じく、抑揚なく言った。 「意外。考えも無しに、自分の意思で好いているって宣うと思った。折角、論破用の口上をあなたからの呼び出しがあった時点で考えてたのに」 「鬼か、君は」 「女なんて、みんな鬼だわ。さて、意中の相手が知りたいと懇願しているのに、答えないとは薄情な男ね」 「仕方ないよ、僕に答える事は出来ない。たとえ答えたとして、その答えすら、0.2秒だけ存在する僕の答えかどうかも分からないのだから」 「ま、そうかもね」  三木さんは機嫌良さ気に顎をクイと上げる。そして続けた。 「なら、本当の愛って何なのかしらね? あなたは私に何を求めるの? 接吻? 性交? 妊娠?」 「せ、に?!」  続く禁句に胸が張り裂けそうになったものの、僕は努めて冷静に考えた。あいも変わらず、彼女の能面は外れない。思えば、告白して、付き合って、僕はどうしたいのだろう。正直、三木さんが挙げた事を期待しないと言えば嘘になる。でも、それだけじゃないはずだ。そんな動物的じゃなく、より人間的で、もっと高尚な何かがある。
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