3人が本棚に入れています
本棚に追加
「多分それは、君が欲しい物だ」
「私が欲しい物?」
「君は要するに、たった0.2秒の途方も無い試行回数の選択にも動じない、恒久の好意が欲しい訳だ」
僕がそう言うと、三木さんは目を閉じ、少しの間考えに耽けった。自分がこれまで求めてきた物の答え合わせをするように、あーでもないこーでもないとブツブツ呟く。
そして、目が開いた。
「なるほどね。あなたの言う通りなのかもしれない」
「それは良かった。あとさ、今思い付いたよ。僕が僕の意思で君を好いている証明は可能だと思う」
「ふーん、なら聞かせてもらおうかしら。もしかすると、心が傾くかもしれないし」
「そのつもりだよ。こっちは人生を懸けてる」
「そ。早く始めて?」
三木さんは審査官にでもなったつもりなのか、腕を組んで見せる。能面の口端が僅かに上がった。
「これまでの話から鑑みるに、君の必要とするものは所謂、永遠の愛という奴だ。僕は、それを提供出来る証拠を出せば良い。いいね?」
「そうなるわね。でも証拠って? ずっと前から好きでした、なんて言葉、これまで星の数ほど聞いてきたわよ」
「いいや、僕には物証がある」
「なるほど、なら提出なさい」
促されるまま、僕は背負っていた一斗缶を床に置く。ガゴン、ジャラジャラと鈍重な音が鳴った。
「ずっと不審に思ってたけど何これ」
三木はムっと眉根を寄せる。
「僕の秘密兵器って所さ」
軽くなった肩を僕は竦めてやった。
最初のコメントを投稿しよう!