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「まさかあなた、『断ればガソリンでも撒いて自殺するぞ』なんて言うんじゃないでしょうね。なら普通に私、死ぬわよ?」  急に興味が失せたのか、三木さんからまた表情が消える。しかしそれよりも、あっさり心中を受け入れる彼女の姿勢の方が僕にとって衝撃であった。 「いや、死なないよ……言ったろ? これは物証だ」 「何の、かは聞いてない。これが僕の愛の形だードカーンなんてされてもおかしくないわ」  一理ある。そもそも、一斗缶を背負っている時点で奇異の目は避けられまい。狂人と思われる事こそ道理である。 「なら結論から行こう。ここには、約三万円が入っている。しかも、1円玉でだ」  僕はペンペンと一斗缶の上を叩きながら言った。この一斗缶もすっかり錆だらけで、少し触れれば僕の手は赤茶色くなった。 「は?」  そして、三木さんは明らかな嫌悪を示す。 「まぁ聞いてほしい。君の危惧するよう、これは僕の愛の証明だ。本当は告白が成功したら持ってこようと思っていたけど、持ってきて良かった。何故ならこうして、君を落とす武器になっている訳だからね」 「ひょっとすると鈍らかも。早くそれで刺してみたら?」  三木さんは指をくいくいとやる。随分と舐められたものだ。 「では早速」  僕は己を奮起させ、一斗缶にガスンと足を下ろした。
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