拝啓、牢獄にて晩餐を訊く。

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拝啓、牢獄にて晩餐を訊く。

   *** 「大佐さん、本日はなにをされるんでしょうか?」 「決まっているだろう? 君は捕虜なのだから――尋問だ」  そう尋ねた少女、リリィの言葉に軍服の男はニヤリと口角を吊り上げる。そして黒色のさらりとした髪を揺らし、銀色に光る眼鏡の奥の瞳がまっすぐにリリィを見る。いや、見下す。  ここは、とある帝国の地下牢。分厚い壁に囲まれたここには、リリィと大佐しかいない。  そこはジメジメとした陰湿な空気が流れ、不安を掻き立てるような暗闇を照らすのはわずかなランプの明かりだけ。ユラユラボンヤリ、オレンジ色。天井からはポタポタと汚れた水滴が滴り落ちている。  反乱軍の一員としてこの帝国に潜入し、そして失敗したから。たったひとり、このひとに――大佐と呼ばれる彼に捕まってしまったから。今のリリィは、大佐の言葉通りに「捕虜」という立場なのだから。  だからリリィはここにいるし、両手は冷たい石壁から伸びる鎖に繋がった手錠で固定されている。衣服もぼろ布を継ぎ合わせたみたいな、ひどく質素なシャツだけ。そんな状態で、そんな状態のままで、ずっと。ここから出ることは、二度とないかもしれない。  そして、そんなリリィを大佐はくくく……と喉を鳴らすみたいにして笑いながら、顎先に手を添えて。  近づけた顔、耳元で囁くようにして。 「……さて、今日の尋問だが」 「はい」 「今晩はなにが食べたい? 君の好きなものを用意するために、その情報が欲しい」 「エビ……」 「わかった、最高級のロブスターを取り寄せよう!」  ――今日も、恐ろしい尋問は続きます。
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